イベント報告
第5回TOKYO成木の森トレイルラン
5th TOKYO Nariki Forest Trail Run
2015年5月10日
■KFC徒然

5月10日(日)、東京都青梅市にある成木で森の新緑ベストシーズンに上記大会を開催しました。

この大会は今年の4月1日から施行された 環境省の「国立公園内でのトレラン大会の取り扱い指針」や 東京都の「自然公園利用ルール」に基づいて開催された最初の トレラン大会となりました。

【東京都の意図】

昨夏、東京都の自然公園ルール策定に当たり、東京都環境局の担当者からヒアリングを受けました。担当者の方はハイカーであり、 トレイルランナーでもある方で、東京都全域のハイキングコースの現状や問題、さらに都内の全てのトレラン大会にも精通されており、 驚くほど知識が豊富でした。

当時のマスコミ報道から、多くのトレラン愛好家やトレラン大会で地域活性化を目指す人たちの間で、トレランを抹殺するような 厳しいルールが 作られるのでは ないかと危惧する意見が多くありました。

しかし、都の担当者は現状をよくご存じで、トレランと云うスポーツを山間部の地域活性化 に最適なイベントであるという捉え方も、 また、今後、トレランが発展していくためには、 ある程度のルールは必要というのも、我々と同じ意見 でした。

そして、都はトレランと云うスポーツが今後益々発展していくためのルール作りを目指しますと云うものでした。

それにしても、17年前、「青梅高水山トレイルラン大会」を立ち上げた時、これほど愛好者が増え、世間を騒がすことになろうとは 夢想だにしていませんでした。

【初のトレラン大会のルール化】

昨今のトレラン人気の高まりを受け、ずさんな大会運営を抑止するために、4月以降のトレラン大会に対し、東京都だけでなく、 国(環境省)も 新たにルールを設けました。

公道を走るマラソン大会と違って、山道を走るトレラン大会は、これまで当局からの規制や ルールは皆無でした。 だから、雨後の筍のように短期間の間にあちこちでトレラン大会が増えたのです

極端に言えば、トレラン大会は、山道さえあれば、どこへも届け出ず、インターネットで参加者を募り、ゲリラ的に大会を 開催出来たのです。

その結果、ハイカーが多い鎌倉アルプスや高尾山でも大会が開催でき、ハイカーとの間で軋轢が起こったり、 植生にダメージを与えたりしたのです。 だから、これら野放し状態を是正するためのルールが必要だったのです。

結局、当初、トレラン関係者の皆が心配していたような厳しい規制ではなく、ハイカーとの 共存や植生の保護等々の常識的なマナーを 守らせるための内容に落ち着きました。

【苦肉の代替コース】

今年は会場から遠い“高土戸入り林道”をスタート地点とし、従来コースの逆走にしました。と云うのは、昨年2月の大雪で、 これまで使っていた“なちゃぎり林道”が 崩落し、それが未だ修復できないでいるからです。

大会会場とスタート地点が約1qも 離れているというのは、参加者の皆さんだけでなく、我々の運営も 予想以上に大変です。一刻も早い修復を祈っています。

さて、レースは“高土戸入り林道”をスタートし、黒山を超え、棒の嶺まで上りが延々と10qほど続きます。ネットによる衛星距離では 8qほどですが、実際には10kmほどはあります。衛星距離には高低差は考慮されないので、3次元の山では誤差が大きくなります。

その後、 棒の嶺から 黒山を抜け、高水三山(岩茸石山、惣岳山、高水山)を廻り、下山し、中島製材所へゴールします。

【箱根優勝経験者の参戦】

今年は、トレラン界の実力者である栗原孝浩、渡辺良治、牛田美樹選手に加え、箱根駅伝優勝経験者の大津翔吾選手が参加されました。

優勝は渡辺選手でしたが、大津選手は最高地点の棒の嶺山頂には渡辺選手を抑え、トップで現れました。距離は約10q、 高低差約700mという延々と上りが続くタフなコースです。後(現役実業団選手)のことを考え、下りは思いっきり責められなかったのでしょう。

上位選手は下り坂を猿のようにすっ飛んで下って行きます。結果は5位でした。レース後、箱根よりキツかったとおっしゃっていました。

【海の葉山から、圏央道効果か】

今年は葉山から数名の海の人が参加されました。7月に葉山で開催しているオープンウォータースイム大会で、 第1回大会から運営を手伝ってもらっている「BEACH葉山」の面々です。

普段、海のスポーツを得意とする彼らに成木の山はキツかった と思います。 でも、帰り際に、満足そうに楽しかったとおっしゃっていました。次は我々が葉山へ行く番です。

因みに、昨年、圏央道が東名まで開通したお蔭で、海エリアと山エリアがぐっと近くなり、一気に南北交流が活発になった と感じています。

【“ゆめなりき”活動】

過疎が進行中の成木を元気にしたいと云う願いで「ゆめなりき」というグループが誕生しました。現在は地元若手中心に 集まっておりますが、地域内外問わず、年齢問わず参加できるスタンスで動いています。興味のある方は、ぜひ参加して下さい。

数年前と比べて成木の空気は確実に変わったと感じています。若者の活動が目立つようになってきました。この度の“ゆめなりき”然りで す。

我々が活動を始めた10数年前にはなかった活気のある空気です。成木の人たちの努力はもちろんですが、 長年続けてきたトレイルラン大会、ヒルクライム大会、 成木の家活動等々が実を結んできたように感じています。 これらのイベントの最終形はこの辺になるのかなぁと感じています。

【新ルールを受けて】

環境省(国)へのモニタリング用として、大会前のハイキングコース写真とレース後の同地点の写真を提出しなければなりません。 そのため、大会翌日(11日)にハイキングコースの写真を撮りました。

レース前(GW前)に撮っておいた写真と比べて、周囲の樹木は 新緑に覆われ、ハイキングコース脇には緑の草が育っていました。予想に反し、びっくりです。前後の写真を見比べると、いかに自然が 逞しいのかが一目瞭然で分かります。

すなわち、GWの数日間に樹木が一斉に新芽を出したのです。レース前とレース後の写真が反対の様で、トレランレースによる自然への ダメージは 見当たりませんでした。安心しました。

また、国立公園の植生を護るため、スタート前に参加者のシューズ底に付着している土を洗浄することも義務づけられました。 こんなことは初めてなので、洗浄方法をいろいろ考えた挙句、結局、大型の平らな容器に浅く水を張って洗ってもらうという単純明快な 方法にしました。

しかし、実際には参加者のシューズは全て新品のようにキレイで、土の付着したようなシューズは一人も 見当たりませんでした。

【NHKの丁寧な取材】

このようなホットなトレラン界を取り巻く状況を取り上げるため、NHKの現地取材がありました。

大会日の様子だけでなく、 その前後にも現場の取材があり、過去にこれほど丁寧な取材を受けたのは初めてです。 昨年取材を受けたTBS番組「噂の!東京マガジン」の質の悪い手抜き取材とは大違いです。

NHKの放送内容は、昨今のトレイルラン人気と今が旬のトレランルール化がテーマでした。ランナーの安全確保や他の 利用者(主にハイカー)とのトラブルなどが出てきたことについて触れた後、愛好者や運営者の間で広がりつつある自主ルールの 動きについて紹介されました。

そして、番組のコンセプトは、トレランを悪者扱いにするのではなく、山のマナーやルールを守りながら 他の利用者と共存できる形で定着して行って欲しいと云うものです。東京都のルール作りの考えと全く同じでした。

因みに、第1回目の放送は夕方の「首都圏ネットワーク」(5月27日)でした。そして、 第2回目は6月11日放送の全国版の朝のニュース番組「おはよう日本」でも放送されました。

今年はトレランと云う新しいスポーツが発展していくための「トレラン元年」とも云うべき年になると感じています。

【レポート・フォト】
【Special Thanks】

成木7丁目自治会、里仁会、西東京市役所トレランクラブ

写真提供:小野口健太、池田将、舘岡正俊